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『スロー・イズ・ビューティフル』 辻 信一著
「ナマケモノ倶楽部」を主宰し、スローライフとエコな社会実践をしている人類学者の辻信一さんの「スロー・イズ・ビューティフル」を読んでいます。持続可能な生活、環境、社会を提言する示唆に満ちた本です。そのなかに、こんな一節があります。 今は、それどころじゃない、の今 「今はそれどころじゃない」と大人が言う。 すると子供が゛「じゃあ、どれどころなの ?」「こうしてはいられない」と大人。 「じゃあ、ああしたら?」と子供。僕たち大人は確かによく、「こんなことている場合じゃない」と思い、またそれを口にする。では、どんなことをしている場合なのだろう。 「今はそれどころじゃない」と言われて「それ」は否定される。外される。しまい込まれて、やがて忘れられる。「それどころじゃない」と一度言われた「それ」が、もう一度呼び戻されて『今こそ、それを』となることはほとんどない。 「スロー・イズ・ビューティフル」より
わたしたちは、大事な「今」をキーワードとして、「それどころじゃない」と「それを今に置き換え」ます。今、大事・・とは仕事やお金や目下の関心事に関わることが多いのでしょう。けれど「それ」をはずされた「今」はやがて、「からっぽの今」になって加速して、どこかへ走り去ってゆきます。まるで回送電車のように・・です。子供たちはそんな大人の「からっぽの今」がよく見えているのかもしれません。生活の加速化から・・減速化スローダウンを辻さんは提言します。ちょうどエコな動物ナマケモノに学んで、持続可能で支えあう生活・社会を考えてみては?ということなのでしょう。スロー・ワーク、スロー・ボディ、スロー・フード、スロー・サイエンス、スロー・ラブなどなどゆっくり進むことをよし、とする考え方です。わたしたちの社会は準備社会だ、という指摘も興味深い。 いい小学校にはいるための準備としてい幼稚園にはいる。いい幼稚園にはいるためにいい親を組ませる・・といった「将来への準備としての今」をとらえる手法です。当然、いい会社に入るためにはいい大学にはいらなければなりませんから、できるだけいい小・中学校、高校を準備しなくてはいけません。さらには、いい会社に入ったらいい配偶者を得ていい収入を得て、働きづめに働いてできるだけいいころあいに「いい病気」になっていい病院にはいり、いい棺おけに入り、いい墓にはいらなくてはならないということになります。いずれは、いい母胎にいい遺伝子を加工して入ることになるでしょう。当然のことながら、「今を楽しむ」ゆとりなんかありませんから、「今を準備行為と情報集め」で満たすことになります。今とは、楽しい時間のはずなのにやせ細り、やがてからっぽになってしまうということなのでしょう。 最近、「三丁目の夕日」か゜ヒットして、よく話題になりますが、昭和30年代のように「今を今として」暮らす「それとともにいる」時間をとりもどす必要があるかもしれません。忙しい、忙しいと言うと「それ」は外されます。「それも大事、今も大事、ゆっくりと進む」のがいいかもしれませんね。
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