スロー・ライフの達人・・・流水龍也さん (若草幼稚園園長)
わたしの住まいから歩いてほどないところに「若草幼稚園」はある。名前どおりに春には若葉が茂る緑の繁茂する幼稚園だ。街中ではあるのだが、この一角だけは小さな森にいるような感じ・・・隣が阿沼美神社(あぬみじんじゃ)というせいもあって鎮守の森と若草の緑がつながって街路はいつも木々の小枝で日陰を作ってくれる。
さてさて、この幼稚園の園長さんが第一弾『スローライフの達人』流水龍也さんだ。
そろそろあしかけ18年のおつきあいになる。はじめて、この園を訪れたのは17年前の春のことだ。友人から若草の噂を聞いて初めて訪れた。「みんな自由保育を履きちがえとるなあ。人間はもともと自由なんよ。自由保育なんて、ことさらに言う必要ない思うな。」というのが初めて会った時の流水先生の言葉だ。わたしは「なかなかすごいこと言うな。」と内心思いながら、親切に園の案内をしてもらった。
「子供はなあ、遊びながら学ぶんよ。大人はそれを邪魔したらいかん。じっくりとつきあいながら見守るんよ。」と目を細める。廊下には無造作に無数の積み木が様々な形で積まれていた。
園長は「これはこどもたちの作品なんよ。翌日また続きができるように、かたずけはしないようにしとる。」・・・確かに遊びの空間のままだ。それから、園庭に案内された。なにやら様子が違う。園庭が波打っているのだ。なだらかな凹凸のある園庭。「ある園庭アーティストに出会って、わし、考えを変えたんよ。」と園庭の凹凸のわけ、フレーベルのキンダー・ガルテンや恩物(おんぶつ)のことなど訥々と語ってくれた。彼が言うには「人間はまず、自由なのだ。」ということを幼児期にしっかりと体験させないと自由を知らない子になること。もうひとつは、こどもは大人以上に気遣いがあるということだった。「子供は、自分が親の保護の下にあることをわかっとるから、まず親に気をつかうんよ。」「だから、子供を人格としてあつかってあげんといかん。」と語る目は生き生きとしている。そして、最後に「いろんな子がおるから楽しいんよ。いろんな子がいっぱいいてそれでええ。とじこもってもいいし、走りまわってもええんよ。」と語った後に印象深いお話しをしてくれた。
「子供は何を思って、毎日生きてる思う?」と何気ない質問にはてな、と思案していると・・・・・・。
「子供は明日もきっと楽しい一日にちがいないと信じて生きとるんよ。」と明快な答えが帰ってきた。
あれから17年・・。かつて、この若草の園庭で、遊び育った子は、今は成長して母になり、わが子を連れて通っている。
園庭の風景は、みどりは今も、あの時も変わらない。砂場もジャングルジムも木々もログハウスも・・・そして、子供たちの笑顔もあのときのままだ。そして、園長は今も園庭にいる。園長職のかたわら、ここ10数年彼はアートとバンド活動に熱心だ。毎日を楽しく過ごし、クリエイティブなことに専念している。そして、自分は「ブルーズ・シンガー」と言い、流水バンドと四国や県外でコンサート活動などこなす・・生粋のスロー・アーティストだ。恩年60歳。お年とはうらはらに、気は若く、活動的だ。本来、教育というのはアートフルなことなんだな、と流水園長を見ていると納得できるようだ。